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詩誌AVENUE【アヴェニュー】~大通りを歩こう~

詩誌AVENUE【アヴェニュー】~大通りを歩こう~

オリジナル意訳1    by塚元寛一

ウィリアム・シェイクスピア
William Shakespeare


   1564年4月26日~1616年4月23日。英国の劇作家、詩人。エリザベス朝演劇を代表する作
  家であり、卓越した人間観察眼と内面の心理描写により、最も優れた英文学の作家とも
  言われている。また彼ののこした膨大な著作は、初期近代英語の実態を知る上での貴重
  な言語学的資料ともなっている。


 
    ソネット127
     Sonnet 127


その昔、海の沖から吹く風のように黒は、新しく凍った雪の上・・

 もの言わぬ夜が明けたのは・・暗い気持ちで深い海のほとりを歩いた時――

その黒を発見してから、美しさはひそかな湿りで汗ばみ、
 、、、、、
 名となった。・・いま星の鏤められたように、美は。

そして夜、石炭のように黒い肌理が湖を悩ませた時、

他の女に心を燃やしたことなど――

 おお!ひとすくいの水のことなど・・

   ちょうど、昔・・酔い痴れて惚っとりとしていた時、

   あの日、恋の熱に浮かされていた、

   みずみずしさ を思い出す・・
                    いろごと
あなたに囚われの身でなかったら、情事をする、

羞恥心も起きない、くちびるが・・

うやうやしく触れることも求めない、
、、、、、、、、、、
おしゃべりできるのに、迷い込むこともないのに

 いたる所で、真の美は偽と思われ、あの波も、

  蟻――、相手にされない胸はさみしい・・

心地よい甘さが神聖ではなくなった・・その瞬間から、

 恥のない人生が始まり、でも、崩れかけた藁小屋・・

  電光の真っ白いほのめきのあとに――真珠・・

心を知りつくしているあなたの眼は黒・・

葡萄酒のように私を酔わせ、昔を憶えば、

 人を酔わせる、罪の舌、失恋の悲しみまで打ち明ける・・

一体何に涙に暮れ、まだ知っていない、わかっていない、

 美しさの定義にいま湧いてくるはずのあわれみよ・・

本当に苦しみを紛らそうとする燐光が、

  礼拝の道具――、その眼差しは、まだ泣かない・・、

  すべての舌が、何ら責を負いはせぬうちに、

   やすやすと遡り――、あなたへと堕ちてゆく・・

  ときおりその瞳が夜であろうと孤独であろうと――

  いぎたなく眠りこけた美が・・こうして夜の続く限り現われる、

  またこうしてその真珠に心が寄りそうように願う――。


    アミアンの歌
     Amiens’ Song


 吹かれて動けば、心も乱れる、

 アミアン!・・アミアンの名は、

 かつてこの地のガリア系部族、アムビアニ族から・・

 好奇心を抑制するのも、不親切かも知れませんよ!

 寝そべっている浮浪者たち、いえ少し不親切すぎるかも知れませんが、

 誰にも迷惑をかけないように努めて・・

 上品な暮しをしているじゃありませんか!

 でも、人間の忘恩など。歯切れが悪くなり、敬うことを忘れる、

 私は見たことがない、――別段、物識りぶるわけでもないが、

 あなたのモヤモヤした心が失礼な模様!

 ホー氏!ホー氏!・・歌う、エメラルドの柊とありながら!

 ほとんどの友情なんてと片眼を瞑る、

 ・・最も愛するとぼけたピツエエロ!

 その後のことですって!・・ホー氏、胞子――ヒイラギ・・・

 こんな人生は!終わりにすべきだよ・・クリスマスみたいだから!

 耳に逆らうようにお前は酒に酔っている!・・

 [フリーズ、フリーズ]汝はにがよもぎの空・・!

  chorus:にがよもぎ!

 はい、そうですよ、にがよもぎ! 汝・・その近づいて噛まない

 原住民!でもほら、・・劣等な人間は犬の真似をさせたがるから、

  「ほら片脚をあげて、この肥え太った豚にかけな!」

  ああ・・アミアン――伝統の誇りを自覚しています・・・

 アミアン中にある水をすくって咽喉の渇きは癒えない・・汝!

 お前が勝利するような場面が思い浮かぶわけではない、

 友達がいない過去を思い出す――また思い出す・・

 こんな路上でものをねだらず、大道芸人の君じゃないか!
 
 ホー氏!ホー氏!・・歌う、エメラルドの柊とありながら!

 ほとんどの友情なんてと片眼を瞑る、

 ・・最も愛するとぼけたピツエエロ!

 そしてねえ道行く人!・・悪あがきしないでさっさと

 森のお前の住居へ帰れ!――と君は言ったのか、酔っ払って・・

 あるいは口が滑って!でも彼は帰らない・・

 だって彼の人生は最後の一言に、ふと心を惹かれるから・・

 アミアン・・アミアンの名は陽気な花――。






エミール・ヴェルハーレン
 Emile Verhaeren


  1855年3月21日~1916年11月27日は、19世紀後半から20世紀初頭のベルギーの詩人・劇作
 家。フランス詩壇で活躍し、ポール・ヴェルレーヌ、アルチュール・ランボーらとともに象徴派の
 一翼を担った。当初自然主義によっていたが、やがて独自の境地に達し、人間讃美を主題とし
 た新領域を開拓した。1909年、1912年、1915年の計3回、ノーベル文学賞候補にノミネートされ
 た。その名声の高さがうかがえます。



    僧侶
     Les Moines


僧侶たちは、血の冷たさを見る巧妙に偽造された

 痕跡のなかで 破風、ああ吹き抜けの光よ――

雷のとどろくごとくに魂は、炎を消す、

 魚になろう,真珠採りに出掛けよう,

  土の匂い おお土の匂いを嗅ぎ,
              いだ
それは記憶の底から取り出す一枚の庭の写真・・

この庭で残忍な相貌と、魂の不安を精製し、

忘れてゆく農場のあなた、実体のない動物の声を聞く・・

 唇を噛みしめる、あの顔が、叫びが天に吸われている――

業火の苛責によって百色の幻覚が悪の神秘を生み、

我々は星がオォケストラした後の洞穴の空気から、

銀と鉄を神の形代に寄せて、武器を求めた

 ああ狼、人間の血の汚濁をかすめ取る美しい牙を

  時に咽喉元から燠はくねり、踊り出、
            ドンキーホーテ
幻の風車に挑みかかる月明かりも虹に染まるだろうか

あなたは夜の冒険、世界の規則、キリストのヴァリエーション!

 ・・直観的に悟ったであろう、遣る瀬無い老いの咆哮の瞬間。

あなたは背を曲げずに少し異なる火や水、

この巨大な黒い穴に棺がいくつも納まり、間断なく納まり、

 王家の響きを伴う・・

僧侶――僧侶・・

 ああ儀式や神話にロゴスとなる崇高なキメラ
                アッサンブラージュ
源をたどれば、先鋭的な主張、集合体の爆ぜる音

 永遠とは(単一の、)・・ああ、(各々の解説の中で、)

あなたの心は美しい塔の中に匿われてアラベスクとなる

あなたは、首の十字架を手にとり、松明を揺らがせ、

 ここで揺れている、ここで残っている、

  根源に・・揺れている――おそらく・・残っている
、、、、、、、、、、、
埋葬されている花や葉と、いま、手にある無数の棘・・

ああ!醜悪に肥大化する静かな僧侶

ああ!いかに地球の声、自然の声を聞き分けていくか僧侶

天は不在の夜の歓楽に不幸な共感に知覚意識する
 
亡命せよ僧侶、グランディスの一切がこぼれ落ち、

彼等は追い出され自虐の煙となり、その服は罪業を燃やす
、、、、、
嘲笑う勿れ、照る月の光はまだ寒けれど、

 抑制作用に、狂気の道と、ああまだ消せぬ花・・
              いのち
ああ最高の太陽の血潮の生よ、リトマス紙さながらに蒼く染め

我々のために蔦の葉よ降るな、と言った。

ああされどもパレットに絵筆が打ち鳴らす

 積み重ねてゆく景色に心臓 を 壊し た ――

泥の手のひらに折り畳まれている地図をひらけば

修道僧の河、おほき鍵盤の上で発語し

最後の魂は滅ぶ前に、鎮痛剤的抵抗を試みる

 ・・・離れることすら非力な、かよわい、涯のない隘路で

  わたしはわたしの居場所より上へ、その上へ駆け上がる
、、、、、、、、、、、
あなたは神秘的な祭壇を、わたしは初めて鳴動する弦の音を

それらが眠気に逆らう貞淑な放浪雲の、

 ・・・おお天蓋の下で、フロンティアを超えたろうか

  ああ、光る夕暮れの不連続なあなたと混ざり合うだろうか

いつかこの魂は永遠を望むよ、指から、

 あいまいにすりぬけてゆく弓よ・・、曳いた――。
                        ゴスペル
淡い夜、逃れようのない無垢の猥雑な聖なる音楽から

 物思いにふける 悲しい,寂しい,

  (この永遠への 恐れを抱いたままに,)
、、、、、、、、、、、、、、、
暗澹たるあの火災が問いただした、長く胸のその谿の水のよどみに

 窓を浮かべ、画布を浮かべ、栄光へと結露のおきて黴はえ

  おお、鱗の落ちてゆくとりとめのない倦怠感がくすぶっていた

そしてあなたのことを考えるときの最後の冒涜

 ゆるんだような、胸にぬるい痛み、ああ 赤!

巨大な剣で貫く半獣神にこぼれ落ちる手帖!

 ・・いろの白いあなたの影、夢のない眠りのなかで

  わたしを見る・・あなたを見る――

   それは(単一の、)・・おお!(各々の解説の中で、)――



    穏やかな修道士
     Moine doux


 幼稚な感覚だと言われている、ロマンチシズムに拠って・・

 彼はキメの細かさ、緻密さ、匂やかさの僧侶である。

 人は心ないことを言う、薔薇の花を椰子の木に飾る、

 あなたの手が伸びる――梯子もないのに・・

 しかし皆さん、大地は足の裏から聞くことのできる交響楽です・・、

 ――死ぬるきわまで・・

 人びとの上に花があるのは、それに近い恍惚を感じるのは、

 静かな心地で、・・あなたの心が丁寧に匿されているものから、

 たった一歩、しかし貴重な一歩を踏みこんでいるからなのです――

 青空のように淡く・・青い、聖読の堆積よりも貴いこの天蓋といえる頭脳の、

 わたし達は・・額がくるめく。涙が煮える。この生活の平野にいます――
 、、、、、、、、、
 湖は銀色の道でした――わたし達は金色の心で通り過ぎ・・その後へと。

 湖のなだらかな形・・時に凸凹とした形、その鍵のようなギザギザ感をもって、

 赤外線による写真のように、水に沿って、心を沿わせている僧侶です。

 白い百合の行列・・この夜の光がたとえ蝋燭の持つゴシック小説の響きを帯びても、

 清浄無垢なものへと反射し、これらの僧侶たちはどんな時でも、

 聖母マリアの素朴な愛好家であったものです・・

 くりかえされる強い罪名、動かし難いものを根源的に探る触覚のように、

 絶えず燃えるような宣言で、母になりたい、あなたの父になりたい、と――

 同情的な性格が孤独の果てに、知恵の果てに、気付こうとした者たち・・。

 誰しもの人の心に燃えるような情熱がある!・・宣言がある!

 生きてゆく範囲がある! 裸だと言える――絵のように、

 彼は海を感じた、大空の火のような夥しい星に、

 勝鬨をあげた・・賞賛を、心の中でひっそりとあげた・・風がそれを攫った、

 彼等の目の前には確かに、夜の、不気味な、

 薄気味悪い光景が拡がっていたが、いま、天使の聖歌隊が!・・

 いま、僧侶である彼等自身の唇には・・つかんだ感じの万象が――

 人は何者であるのか、を問うよりも、何処で生まれ、何処で死に・・

 どんな人生を生き――と 渇望は、純正な音楽へと帰依し、燃え、

 時に誓いを破るように、誓いを貪っているかどうかを尋ねられ・・・

 答えられず、それでもただ大きな目という、トオキイの音が、

 ふっと消えて、サイレントに変った瞬間のように・・心は絶えず燃えて、

 人は一体どんな料理を作るのだろうか、何を食すのだろうか、と言った人・・

 彼等は牛や豚を食べる、山羊も食べる、猪も食べる、・・

 ある人びとはそれをゲテモノだと言う、それがこうじて文化を形成し、

 一国民がすべての総意であるかのように、罰の火の中へと言った――

 信仰とはそのような気質であろうか、いや、・・

 熱をはかっている医者のようなものだろうか。稀薄な香料、

 神秘的な体験をもたらす報酬のためにと・・多くの女性が、愛の夜を知った、

 彼等はイエスに接吻けをするために神聖なものを、ねばり強さと、奥深さで、

 唯一無二のように体験した――夜は夜の心であった、

 朝はまた、朝の心の眼にいよいよ鮮明にしみついていた、

 夜を、千万の想いを込めて払う時にまた穏やかだった・・。






ヤン・コハノフスキ「セントジョンズイブ Prelude」

Jan kochanowski「St. John's Eve Prelude」


  生年月日不明~1584年8月22日。ルネサンス時代のポーランドの詩人、
  王室秘書官。折衷主義哲学(ストア主義、エピクロス主義、ルネサンス
  期の新プラトン主義、そして古代とキリスト教を結びつけた神への深い
  信心の融合)の代表的な人物でもある。





太陽光線は、火山の口から燐光の見えざる点となって、

と、ナイチンゲールは、薔薇の磁気、

この黒い森の指揮者は頭上ラブソングを贈る

はいはい、仮想舞踏会、シャンデリアが点灯。


と炎は優雅な破壊、逃げ惑い、焼かれまい

幻想のコーナーでいく筋もたなびく煙り、白・・

啄木鳥が打ち鳴らす、ばらばらと日がな一日けたたましく、

メロディーのエコー、まさに生み出さるべき灼熱の火の地獄。


あなたは移り気な小川に生える緑色、

穏やかな微笑、夕昏れはみんな起きろ!早く起きろ!

土龍も熊も蛇さえも、服を着た、あなた方は驚いた!

ヨモギに花咲く狂気の沙汰! ありえないタンゴ!


強く甘い優雅なピストル、パンパカ!パンパカ!

アレグロしたり、剣劇を交わしたりする、チークタイムに匹敵!

火を丸めると視界は分裂し超越し、ひとつの色彩の愛となった、

シングが始まる、フォーユウの至高点――。



  


ウィリアム・バトラー・イェイツ「愛と死」

William Butler Yeats「Love and Death」


  1865年6月13日~1939年1月28日は、アイルランドの詩人、劇作家。イ
  ギリスの神秘主義秘密結社黄金の暁教団のメンバーでもある。ダブリン
  郊外、サンディマウント出身。神秘主義的思想をテーマにした作品を描き、
  アイルランド文芸復興を促した。日本の能の影響を受けたことでも知られ
  る。青空文庫で芥川竜之介訳の『「ケルトの薄明」より』と『春の心臓』
  が読めます。





メアリー、君は点滅している海を見ている

到る所で偶然に蹄が、鼻歌、咀嚼音する・・

あの乳白色の大理石の複雑な模様

 音のない塔があらわれたら・・風が死ぬ――

「メアリー、あの浪間、記憶に閉じ込められた泡かな」

 フ・・レットの泡・・これまでの日々?

  フレット、肉体の碑・・・ゲイ、僕は寒くなってる・・

全身で絞りとった泡が空にあがる、

のどかな牧草地、春や夏の残響

 世界は何処かへと駆け抜けていった。

  身体をゆすり、毒づき、笑い、せかせかとし、

ブロウ、夏の足は手を出す・・

ひるがえらない巻き髪、穏やかでゆっくりの溜息・・

 アーチと直方体をくぐり、ぼんやりと坐りこむ――

「ねえフレット、銀行があるのね、怖ろしい朝が・・

 別れが、その睡りが永久に身に着けられているのね・・」

気泡バネを使用した靴のように、
、、、、
タイタン、――大声で笑う人びとの夜明け前、

その窯で起こる筋肉の収縮・・耐火粘土の質感の

 無明の洞窟にかくも鏡の丸さを感じ、

湧きいづる水は時間の向こうから沁みてゆき、

 花を求め移動し、寺院のモザイク画は忘れ

  短足の不細工な馬みたいなやつのことばかり

   思い出す・・冷やかな侮蔑だ――

ああ、かくも世界の光が熟する野生の空気の中で、
、、、、 、、、、、、
メアリー、君は僕といる、双子に生まれた
 、、
 宿命・・フレット、許すことに疲れる
  、、 、、、、、、、、
  『ゲイ、この水は何だろう・・・?』

メアリー、涙は腐りきった心の膿み

 ケルトの物語が死と愛について答えるように――

どうせ枯れる花の花輪など、王冠と何の遜色があろう、

 裂ける傷と、泣き声を堪えるのと何の違いがあろう・・

「メアリー、君は二つの孤独な魂として理解するかい?」

きっと枯れた花の花輪も美しく甦る場所で、

 永遠に終わらぬ春のうちに、・・彼は楽園へと向かった、

ほら、 物語の入口はもう開かれている、

ほらもう、黒い瞳、宮殿の表玄関・・

 太陽は羞らう、もう暗い息、野蛍。

でも冬さ、丘は氷河のように、

 のぼると窓のように真っ白で、もう息と、

  区別がつかなくなる、あきれるほど・・

メアリー、悲しい、スティールウールのやぎひげ
  アルカトラズ
永遠の頭痛の種子に眠りこんだ人びとのように

メアリー、君はまだその花を見つめる

それを見たら鈍い水溜まりが揺れる、開いて閉じて

 色あせる、・・セピア色にするために降る雪よ――

君は彼を愛していたか、羞恥か、まだ忘却か、

「氷るわ、あなたのそばには草も木もない、つるといばら

 ・・長くここにいすぎたのかしら、アイルランド――」

死は遠くにある、まだ雪の降る・・

天使の告白、「メアリーあれの身体は闇だろう?」

君は去る、・・これでよかったのか、

 幻視の解放されない内に・・息を殺して

  まだ風船のように浮ばない、自分は、

   スイス時計のように精密な心臓を高鳴らせる・・

メアリー、君はこのドアを開けて何処へゆく!

 ・・雪がもがく、足跡がもがく、

でも魂は追えない、われわれも自分たちを追わない、

 しかし罪を追う、愛と死・・

  愛と死の薄明に膨らむ 羽ばたきが途絶えた――






ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー「最初の散文」

Jean Nicolas Arthur Rimbaud「Premières proses」



  1

        ランプ                                                けだか
 太陽はまだ洋燈のように渦を巻いていた。それは殆ど知性の微かな猛毒であり、崇高い魂
                                               ねや
は名に依拠せぬ香わしい肉の果実を、はるかに勝ち獲る松火のように、地球を閨房のあたり

に。おお太陽!地球はギリシアのオリンピアで採火された溶接用語ほどに、通気は狡猾な眼

に向かって消滅・・あざむかれない、ああおまえは軽佻浮薄な炎、厚かましい木々の緑、過去

の葉、枯れた甘ったるい貧困な花、素っ頓狂ほどどでかい松、ポプラ、オークの木の首根っ

子踏みつけるようにして。(幻など消え、)なのにヒステリックな俺が残る、俺の為にさわ

やかな風が螺鈿や燠する、光の中で風は砂金採りや貝になる。この未来へと向かう空洞のひ

びきはプラスチックやアルミのように、輝く光を返し、おお物質の内側にひそむ火のように
                                                   きらめき
俺を懶うくした木擦れの音が耳元で陰鬱な影の如く攪拌する。そして俺の頭上の晴朗な精華

、シダ・・まこと驕りに充ちた無為、ユダ、残酷無比のユダ俺がいない、俺だけがいないきら

めくみずからの体内が欲するものを選ぶことなく、羽根ある矢の――死・・


  2

 、、、、、、、、、、、、、、、
 俺は青い肉体を寝床にして夢見た・・私はランス、一五○三年に生誕した。

 私はランス・・大聖堂の主クロヴィスの戴冠を目撃し、偉大な聖母像の石、ああ永遠の空笑

いの町。されど及びがたき、われらの選ぶ狭き門のこれ見よがしなポーズ。

 私の裕福な両親、孤独の魂に聖体、さもなければ聡明なミューズ・・彼等は喨々と雨がトラ

ンペエトする劫初からの音楽。たとえるならバッカスの席にも、トロイヤにも。・・私は生ま

れる二十年も前から小さな家、雨風を凌ぐ数千フランを与えられた。あるいはポンド、ドル
                                   サクレ・クール
、遣い方もわからない節約する意味もわからぬアダムの頭蓋の聖心のように。母からの小遣

いを知れば、笑いの火花が俺の性の奥底に嘲りとなってはじけ飛ぶ!
               せいたか
 私の父は軍隊の将校。彼は背高く、檸檬をまぢかにながめやるほどの短髪禿頭の黒。それ

は髭や眼や皮膚と同じ火刑台の処理。――私が生まれた時に彼は・・あんまり記憶になくて少

し恥ずかしいのだが還暦。いや、四十八また五十、さもなければ、思わず祈りの言葉を口に

しよう実際的な五十八。どうでもいいのと同義だが、地獄の蓋はひらく、不死鳥の輸送も危

険な海峡でならありうる。頻繁に憤懣たる。おおされど懊悩、消極的なアンタを悩ませ、苦

しませ続けた、ふざけた展望塔。

 私は母は不可能な夢のように、針仕事。さもなきゃ靴下を繕う。恐ろしい、穏やかなウィ

ィ、その後の完璧な順序“ノン”――家は繕いすぎて虫取り網が必要なほどに、静かな、結

晶の焦点。愛した・・兄弟は腕の中の巣、乳 房と一つという具合。私は、読み取りをし、書
          、、、、、、、、、、、、、、
き込みをし、・・お誂え向きの人生のひつまぶし。研究に消印、『愛』・・しかしクレープから

精 液がしたたり堕ちるほどに、ある日毎の約束――『愛』・・

 彼は二十フランくれると言った――庭・・薬の匂いだ、阿片だ・・

 幻の二十フラン――腐爛。蛆が湧くほどに眼の玉は白い。でもとうとう、内在化感覚器官

の共同謀議。未完了の救援。私は欲しかった、玩具、お菓子、・・美しいランプの灯――幼幻

。五フラン、・・腐乱、腐爛――できることなら・・・何かに立ち返るように手で触れられる頁の

音を意識の中でめくって・・十歳。あの無為。『眼に涙をあふれさせる、藍』・・父、何故です

か、私は混乱した。――閉口した。ラテン語、ギリシア語の教育。夢判断の架空の家、数千

フランの美しい脚、森へと誘う受信メール。揺籃。幼年期の残響(と、)・・あとは何も加え

られていない、かすかな霧に碇を投げ入れた よ・・。後は、何も――彼は年金受給者。焼き

こがし、たじろがせ、私を蝕むことを言う。さらに大きくひらかれるラテン語を学ぶ理由、

お父様、何をご希望ですか? 狂った子供は言語崩壊。時々新聞を見ると、戦争・・永遠の空

よ、ありがとう。密林と砂漠・・でも私はジャーナリストではない。空と海を積んだ船。でも

学ぶ。歴史や地理。塵・・砂や雪?・・それは確かにパリ、フランスであることが必要な歴史、

生活、(絞め殺そう、)ナボポラッサル、ダリウス、サイラス、アレクサンダー、その邪悪

な名前。なれ親しんだ風を装う共犯。ああ!拷問――。
 、、、、、
 おいパンダ、俺はお前を必要としないラテン語授業の堕落。懈怠のうちに貝殻がガラス窓

を叩き破る、あの死への螺旋階段を想わせるフーガ。目覚めた広場。お前は一体何を偽造し

、人民を誤解と錯乱のうちに天国の物乞いするラテン語授業の一すじの獣道。いらない年金

受給者。ラテン語やればよごれたぼろ布にならないラテン語授業者。頭の足りない彼等の甘

い愉楽。休息と疲労の広がりの保持。まるで地上全土と導く案内人のふりする年金受給者。
、、、、、、、、、、、、、
ああ年金受給者ラテン語崩壊。この身もふたもない天下りは世界中の信頼にみちたピラミッ

ドとして、秘密結社的拷問!・・ああ脅されております、ああ猛獣つかいたち、くそっ!あ

あ、(そして俳優のように、)巴里の大脈動オォケストラ。ベンチの上でズボン着用!いい

じゃない!・・勝利のあなた、影絵芝居に!豚飼い牛飼い!――それも試験に合格するだけで

ラテン語年金。神様までラテン系。そいつは本当にアフガニスタン!小男のあそこまでラテ

ン。聖書までバッテン。ユダ・・ユダ・・召喚は正しいか?

 ああああ年金受給者ラテン語崩壊。
 、、、、、、
 動物のような、アーサー。






ダンテ・アリギエーリ「樹氷 VII 死失礼な、同情の敵」

Dante Alighieri「VII - Morte villana, di pietà nemica」



ゲイ失礼な、母の敵、・・または失われた恋人の涙――

古代の十字、地獄の楽園。・・母の悲しみを剥ぎ取られた者よ、

傍聴した、最高裁判所での心臓を抜き取ってくれたまえ!

あの厳しい判決――死刑!・・正しい秤に、夜の閉じた翼が載る、

蝿のようにみじめな奇跡を追い払える材料を与えている。

                      しおみず
・・・でも私は思慮深く 言語努力によって鹽水に入れ替える・・

そして、恩恵によって海の底から、あなたに頼む。釘から外す・・、

しかし板はくぎ抜きの私に言う。「間違っているのは、あなた方だ」・・

でも彼は隅っこで囀るばかりで、鳥、――船はくるりと背を向け、

心に横切っている私を見ないで、左耳から青の身なりして消え――


ああ迷える先生、もし、人生を去るなら、あなたの罪は隠されよう、
                いけにえ
人びとは叫びに似た感情で、恐怖!犠牲!・・母親はまた訪問・・・!
                 いかり
水も砂漠に晴れて行くほどに、忿怒も妥当、神の気に召さぬ行い・・

愛――身を傾けては捉えようとする、育て方、人の姿・・
、、、、、、、
世界のあなたは・・女性に演奏しない武器を持て余す白濁の子午線――


ゲイ、あるいはノーマル、・・飛び立つその人の魂の貌・・・
                   、、、、、、、、、、、
あなたの深層に潜入するも、「いまは構わないで欲しい」
、、
先生――あなたは幾年も獣のようにお過ごしになるつもりですか?

女性において子供は財産・・男性にとっての健康診断!
                   きよ
かくも不在者の夜は長く、あなたの聖い手淫の手はむき出しのまま。






ジョンS.ファーマー。「なぜ、些細なことですか?」

John S. Farmer「Why do you Trifle 」



・・・なぜ、些細なことですか?

望むのに!まあ望む?はあ、望む(望むのに!)

・・・なぜ、浪費するのですか?

出しちゃいたいから!

だってオス蜂なら、キカン蜂になりたいもの

 ――蜂の巣がモネの息に達する映画よりも

ディズ・イズ・憐れみ

生類憐みの令

 ・・・あなたは蜂の本能を忘れました!

    針だけぽきんと折っちゃいましたあ!

望むのに!・・望むのに・・ああ望むのに!

ディス・イズ・憐れみによって夜のベッドを失い

 ・・たとえば自然に『同意』さすまでにのぼり続けて。

FLY 愛しているのですよ、ただ彼は注射針の縮小剤!

ノンストップ短小剤!

LOVE!LOVE!LOVE!

 ――でも彼はやらない、勃たないものとします!

おや、・・とすれば、あなたはインポなのですかあ!

納豆や山芋を食べない病気、ああスーン!

でも・・すぐにドリンク剤を購入すべきだ!・・すべき!

刻み大蒜!・・その刻み目の中で、

 ――私が玉ねぎを切った時の反応をするとしても

ああそして彼女に本物のキカン蜂を教えてやるのです!

LOVE!LOVE!LOVE!

それはよい意味でのイエスです、クロロフィルです、

そのためだけに結婚すると言っても過言じゃないのであります!

宣言は無謀!・・でも愛しています!

必要なのは理想、長く、太く、そして固く・・

あなたはそれが偶然に起こると考えてはいませんか!

いいえ、私もそうです、だから若い時に祈りました、

思わずヌード写真を思い浮かべ、

 たまにスエズ運河に助け舟を出しました!

でも若い-祈る、ああ悲しい若いー折る・・

でもあなたはこれほど多くのヘアーをしめることのできる、

 女性の存在を忘れてはいけません・・!

わずかの衝動で掘削、ときどきはリモコンで運転、

 非常ショー、ショー・ミイ・フォーエヴァー運転!

あなたはまぎれもなく勝利するでしょう、

大切なのはテクニック!

私は上へ、・・おお、上へ、ぐぐっとダウン、上へ、ダウナア回し絵

 ダアウン、ふたたびの演奏、扇風機、換気扇をグルグル・・

そうです子供ほど苦手です!

攻める!攻める!ああ攻めるばっかり!

二枚!二枚!二枚!増やすばっかり!

さあ陽気なジグザグ・ダンスで今日も幻のギグを試みる、

生体解剖図のようにではなく、

連続モーションの写真のように!

上へ!・・すぐにダウッ!でも上へ、ふたたびダウ!上へ、ダウナア

 ――ビクトリー・ロール 蜂はいまや戦闘機そのもの!

まるで特攻機神風!

あなたはさながら同時併行世界!

無数の一致、あるいは一致する現象と女性の讃美歌、

 恋よりも楽しい音楽、飛んで行く天上の一つの星めがけて!

それは知っている!ああ知っている!知っていますとも!

すべきだ、お前自身の内側から降ってくる隕石の衝動、

細かい埃の欲望シナプスー!

他のメイド・インでやる? それともアウトプット?

 ・・・あなたは筋肉隆々がよいと思っているの?

私は確信する、きっとよい体操選手になれる!

女性の洞窟の勇者、天照が隠れた時のダイナマイト破壊

 ・・知っています!知ってるよ!ああ御存知ですとも!

私はほどよい勇気にほろよい加減でほととぎす!

SWEET あなたを愛している!・・

 たとえリップサービスだとしてみても!

AGAIN!の後・・ AGAIN!できるか・・ AGAIN! の後・・

 もしたまたま初めてなら幸運か? グッドラアック!

あなたの最初の勇気、観音開きの要請をした時に、

そのありえない誘惑は始まります。

AGAIN!の後・・ AGAIN!できるか・・ AGAIN! の後・・

さあ空前絶後のメリイクリスマスに招待・・

さあ良い刺す!ああ酔い醒 ま す・・

ムッソリーニ大佐!・・おやめください

ムリニゲッソリーニ中佐!・・何するの、何するの!

ああムッヒョウジョーニパッチン少佐あああ!






イワン・セルゲーエヴィチ・ツルゲーネフ
 Ива?н Серге?евич Турге?нев


  1818年11月9日~1883年9月3日。19世紀ロシアの代表的な小説家の一人。
  ロシア帝国の貴族。理想主義的な父の世代と、唯物論的な子の世代の相克
  を描いた『父と子』(1862年)は、19世紀のロシア小説の最高傑作の一つ
  に挙げられる。日本ではいち早く二葉亭四迷によって翻訳・紹介され、特
  に国木田独歩や田山花袋らの自然主義に大きな影響を与えた。




    春の夜 
     
Весенний вечер


          こがね
わらわらと蛍湧く黄金いろの雲

大地に一縷の希望だ
    あか
昼の町、燿るくなる鼻先は、フィラメント
ランプ
太陽において輝き、ああ露は楽しげに語らい

谷から五キロにもわたる蜿蜒長蛇の霧の列が

 雑音を遮蔽した

歩くごとに春の霹靂が来る、扶助と加持
ポプラ
白楊の葉に触れる、なよやかなる気韻の風は
        
ひらひら、陽遊のリズムを通し、
       みのも
 この葉を水面に浮かべた・・


この静かに透きとおったものに出会う時、

 いやな高台に映画の台詞はあった

十色もの緑、ああ二十色にわたる暗い森は粛かに・・
            かげ
ほとぼりの冷めた深い蔭影・・

 わたしの笑い顔、しかし、その彼のまどろむ時間さえない
、、、、 、、、、、、、、、
眠れない、眠れないと言うのに、今日のこの町は

 ねむたげにうるさげに目を開く――身を切るような響きで・・
、、、、、、、、、、
日没にマーズが震えて

歓呼し、切断面の大きなたえざる行為を走った

おお15歳の君は、ひと息ごとに遠のく、幼少期は去る

ゆるく撓みゆく心の影の若さよ



    私は何を思うか?
     Что я буду думать?..



  ぞっとする過去のすべてが怒っている、・・死、もっと猛々しい笑いを持ちながら、私は
 
 考える。そしてその後を考えることが出来ているだろうか?・・・


  乱心した傷んだ靴のわたしには分かり合えなかった、・・灰色に寝、さながら湿った生木

 、燃えない樹が雷に打たれる。ああそんな人生に、昼寝はあるか?


  “でも一体何が死だって言うの・・?” だって消え入る煙のように不可能、結局、わ
                                            
 たしには夜が早く過ぎる!だ・・過ぎゆく時にいつも、ああ暗い穴に落ちる夜は寥し。
   

  いくつかの欲望を満たした高価な絵、得意顔に、わたしのいまがそれゆえ留まった。ふ

 るさとのような過去よ・・聖なる悩みを賜ったことを君は覚えているか・・?


  脛に傷をつくり、押出す膿みのようなわたし・・昔のように、魂は悔いる。だが、すぐ改

 めるほどの瞬発力はない。・・ああ、あこがれよ!いまは苦しむばかり――。

  、、、、、、、、
  やがて墓をこさえ、葬式会社、遺産の相続の諸問題を書類化し・・しかし、わたしは何を

 持っている。ああ、何を待っている!そしてその向こうに何がある?・・


  この内省の闇は、天の恵みの果実を腐蝕させた、・・さしものわたしの肉体がひたぶる心

 を失い、・・強制的な無垢。おおナンセンスな取引・・でも、でも、考えてはいけない――。


  わたしはナッツを焙ったものを噛むように、わたしの色褪せた眼の奥にはひらひらと翼

 を捥がれた鳥。負傷した鳥。その鳥がイカロス・・不満は夜を破り、死をうち樹てる――。






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